Prize

 村上春樹の「像の消滅」の英語版を読んだ。日本語の対訳があるので、英語を読んでは日本語を読み、日本語を読んでは英語に戻るという読み方をしたので、日本語の表現と英語とを比べるのがとても面白かった。

 同時にとても驚いた。もちろん日本語をそのまま英語にできないのは理解できるが、フレーズを訳さずにすっ飛ばしたり、フレーズの順序を変えたり、文の順序さえ変更したりしていた。段落の区切り方を大きく変えていたりしていることがわかった。こうまでしないと、英語流儀の文章にならないのだ。あーなんと大きな言語文化差異なのだろうかと、改めて認識した。

 英語版でも彼の本が売れるのがわかる気がした。英語版には日本版の小説が持つ雰囲気が壊れている処はあるのだけど、逆に英語的なユーモアを伴っていたりする。書くときに英語を意識して書かれたとは思わないが、少なくとも脳の一部が英語脳になっているのだろうと思う。だからこそ、英訳でもテーマはずれないのだろう。アメリカやカナダやドイツやスウェーデンやオーストラリアやイギリスやポーランドやスペインで売れるのだ。

 村上君、焦らずに、ま来年もあることだし。


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